インターネットと公共性

担当:崔昌幸

概要

さてみなさん。前回の講義で、社会(科)学における「公共」(あるいは「公共性」)の意味が少しでもお分かりいただけたかと思います。今回の講義では、テーマをより現代的なものに移し、インターネット上における公共性について考えてみたいと思います。

今や誰もがパソコンやスマートフォンなどでインターネットを用いる、言わば総インターネット社会と言っても過言ではありません。そのインターネットというある種の空間における公共性という議論が、実は社会(科)学の分野ではたびたび起こっています。すなわち、E-Democracy(電子民主主義)は果たして実現可能かという議論がそれです。

人々がインターネット上で話し合えば合意形成がなされるのではないか、という単純な問題ではありません。例えば、その中には政治に対して何の興味も持たない人がいるかもしれないですし、そもそも、インターネット上でどのように話し合うべきかという規定も定かではありません。

今回の講義では、前回紹介したユルゲン・ハーバーマスの社会理論にもとづいて、インターネット上においてE-Democracyは果たして実現可能かどうかについて考えていきましょう!

講義を終えて

 第二回目の講義では、「インターネットと公共性」という題目のもと、講義を行いました。具体的には、前回の講義を簡単に振り返ったのち、①E-Democracyをめぐる議論の紹介、②コミュニケーション手段としての討議、ないし熟議プロセスについて、③集団分極化とその対応策について、具体例を交えながら講義しました。また、最後には質問形式のもと、E-Democracyに関するご意見を、フロアから二つ頂戴しました。

 二回目とあって、ほとんど緊張することなく講義を行うことができました。また、テーマ上、どうしても抽象的な議論になりがちな部分は、ある程度、具体例や言い換えなどによって補うことができたと思います。しかしながら、本講義の目標がしっかりと定められなかったことから、スライドの作り方や流れから始まり、本講義で何を一番伝えたかったのかという根本的問題、すなわち公共性が今日的諸問題と深い関係にあるということについては結局、ほとんど触れられることはできませんでした。

 ですが、初回、ならびに二回目の講義を通じて、講義の方法論等を少しでも獲得することができたと個人的には思っております。以上の収穫を通じて、これからの研究や教育に活かしていく所存です。

アシスタントコメント

 前回よりも落ち着いて話し, スライド一枚一枚の情報量はほどよく調節され、前回の授業に対するフィードバックを感じられた。また、本の紹介しながら授業が進み、参考文献も充実していたため、講義に興味を持った学生への配慮も見られる。

 しかし、授業内容や授業全体の流れをすぐに理解することが難しかったように思われる。その原因は、授業中に扱った概念の理解度に関するギャップや、理論を説明する授業の構成法の難しさにあるのではないかと考えられる。

 受講者に理論を分かりやすく理解してもらうための概念に対する自分なりの説明や歴史的経緯、具体例などを用いて授業を行うと、より分かりやすい授業になったのではないかと思う。

 

伊縫寛治(解析学)