担当:萩原広道
わたしたちは、言葉を交わすことで他者を知り、自分の気持ちや考えを伝えますよね。
けれども、それは当たり前のことではありません。
言葉を介した他者とのやりとりが可能になるためには、その発達的基盤として、
「カラダ」を介した「環境」とのやりとりがとても大切です。
ここでいう「環境」は、モノとの関わりという物理的環境と、ヒトとの関わりという社会的環境とを合せたものです。
この講義では、自閉スペクトラム症児1名を対象とした作業療法のセッション場面(子どもと萩原との「遊び」の動画)を観ながら、
「カラダ」と「環境」とのやりとりそのものが成立していく過程について、受講者のみなさんと一緒に考えていきたいと思います。
「環境」とのやりとりの拡がりと深まりが、
言語を介したコミュニケーションの土台として重要な役割を果たしているということを実感してもらえると嬉しいです。
前回は「実験」を使って「量的」に発達をとらえる視点を紹介しましたが、
今回は「実践」の中で「質的」に発達をとらえていきます。
同じ学問分野の中にも、その手法や考え方に共通点や違いがあることを知ってもらえるよう工夫したいと思います。
また、冒頭で、前回の講義の概要と補足説明を行う予定です。
発達科学,2回目の講義はいかがでしたか。
院生の反省会では「アナーキーな講義」と評されました。
狙ってやったとはいえ,うまく整理がつかず混乱したという方も多いかもしれませんね。
ちょっとだけ反省です。
感想で気になったコメントをひとつだけ。
「強み/弱みという考え方は問題ではないか」という主旨のものです。
確かに,「この子は○○には強い/弱い」と断定してしまうと大いに問題アリです。
けれども,あえてそのような切り口で眺めてみると,
漠然と流れていた情報が整理されやすくなって展望が開けてくることも事実です。
質的な研究手法もしくは実際の臨床では,
このように”手段的に”ある切り口から場面を捉えて,
それを参照軸にするということはよく行われていると思います。
いったん仮説を立ててみる,そうしないと情報はただの景色として流れてしまうからです。
ここで大切なのは,「こういう切り口で見ているぞ」ということに自覚的であることです。
講義中にもお話ししましたが,「○○が弱み」だと思ったら,
次には「それを強みとして捉えるとどうなる?」というように視点を反転させたり,
「他の場面でも確認できる?」というように立てた仮説を疑ってかかったりします。
この類の手法を取るなら,この第二の作業は必ずセットになります。
「発達科学」の専門家は多かれ少なかれ,
何かしらかの「発達観」「子ども観」をもっていると思います。
そのような価値観に依拠して研究するという宿命をもった学問ですから,
危なっかしい部分もたくさんあるでしょう。
けれども,それでも非常に重要な分野だと僕自身は思っています。
次回のディスカッションの回で,この点についても議論を深められたらと思います。
ぜひご参加ください!!