線形代数学と非線形現象

概要

 線形代数学は「真っ直ぐな」構造を持つものを研究する数学の一分野であり、他の諸科学へ幅広い応用を持ちます。しかし、この世界には「真っ直ぐ」でないものの方が多くあり、線形代数には限界があります。二回目の講義では生物学や物理学の数理モデルを解析し、線形な場合と非線形な場合とが全く異なる振る舞いをすることを観察します。非線形なモデルに現れるカオス的な現象を楽しみましょう。そして、これらの具体的な現象を抽象化し、数学として理解する試みをしてみます。

講義を終えて

前回の線形代数とは打って変わって、今回は非線形な現象についてお話ししました。数理科学において、何かの現象を数学的なモデルで近似・表現して、それを解析して未来の予測や法則の探究が行われます。そのような中で避けては通れないのが非線形性であり、これはときに複雑な振る舞いを創発します。今回の講義では生物の個体数の例から初めて非線形性について説明し、やがてそれが混沌を生み出すことを数値実験でお見せしました。身の回りにあるものを比較的単純なモデルにしたにもかかわらず、驚くほど複雑なカオスが生じることを説明したつもりですが、その新鮮な驚きが少しでも伝わっていますと幸いです。