文学のミカタ①――「文学」の定義とその研究方法――

担当:山根(日本文学)

概要

「文学」というと、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。小説? 詩? 純文学だけを指す? ラノベやマンガは?

「文学」は身近なものでありながら、その定義を問われると、困ってしまいませんか?  

 

また、みなさんは「テクスト」と「作品」、「作家」と「作者」の違いをご存知ですか?

実は、これらはそれぞれ全く異なる概念なのです。一体どのようにちがうのか? 

この問いには、文学理論が深く関わっています。

 

今回は、文学の定義を確認し、従来の主要な文学研究の「ミカタ」を学びます。

特に、私の専門である日本近代文学の「ミカタ」を中心にご紹介します。

高校までの「国語」とは一味違う、「文学のミカタ」を知るきっかけにしてもらえたら幸いです。

講義を終えて

 今回、「「文学」の定義とその研究方法」というテーマを選んだ理由は、大学の講義では(特に日本文学系の授業において)、あまり扱われていないテーマだったからです。個別の文学作品をとり上げ、教員が自分の研究方法を示してみせること、あるいは、受講生各自に先行研究やゼミでの議論を通して学ばせることも非常に大切です。しかし、私個人の体験として、個々の作品を扱うだけでは、全体的な、所謂ジャンルとしての「文学」の定義や研究方法そのもののあり方にまで、なかなか思索を巡らせることができませんでした。そこで、今回はこのテーマを選びました。

 

 本来、これは60分の授業には相応しくない大きなテーマです。そのため、情報量が多く、進行速度も速かったため、受講生の皆さんには難しい印象を与えてしまいました。また、文字が主体である「文学」を扱うと、どうしても文字数が多くなり、PowerPointでは読み難いと感じられた方が多かったようです。レジュメを中心とした授業を行うべきだったと思います。取り上げた作品の概要や専門用語の説明も不足しており、入門的な授業としては不親切であったと反省しています。

 

 反省点の多い講義となりましたが、講義後、研究方法のあり方について、独自の疑問を持ってくれた受講生が少なからずいたことを嬉しく思いました。授業でも述べたように、文学研究は、自分独自の研究方法・文学理論を作ることでもあります。そのためには、まず、従来の方法に疑問を持つことが必要です。自分の中に生まれた問いを大切にして、ぜひ育ててみてください。

 

 次回は、今回の反省点を踏まえ、レジュメを中心とした授業形式に変更しようと思います。もっと情報量を絞り、語句の説明を含め、わかりやすい構成を心掛けたいと思います。

アシスタントコメント

パワーポイントでの発表に講義担当者が慣れていなかったこともあり、レジュメをそのままスライドに写したという感の内容であったことは否めない。情報量が多く、文学研究の道具立ての説明は洗練されていたが、それらの相互関係が分かりにくかった。また、文学の実例がいくつか提示されていたが、参加者にうまく伝わっていたかは微妙。むしろ、実例部分はうまく抽象化した方がよかったのではないか、という指摘があった。

次回以降の授業ではレジュメなどを用いての発表も考えうるのではないかと思った。ただ、経験が全くないという割にはスライド一つ一つには工夫が見られており、そちらを改善しても面白いと感じた。コメントが相次いだ情報量についても、むしろ文学研究の奥深さや複雑さ、歴史的経緯を知るという点では優れた講義であったとも言えるかもしれない。いずれにせよ、参加者からあれだけのコメント量を引き出したという点ではかなり高い質の講義であったと思う。

 

杉谷(公共政策学)