「公共」とは何だろうか

担当:崔昌幸

概要

さてみなさん。「公共」とは一体何を指す言葉だと思いますか。

昨今、「公共」という言葉をよく耳にする機会が増えたかと思います。公共事業や公共放送などがその典型例です。また、日本国憲法にも「公共の福祉」という文言がありますし、2022年度からは高校の教科として新たに「公共」という科目が順次新設される予定です。このように見ても、「公共」という言葉が非常に多義的であるということが分かるかと思います。

それでは社会(科)学における「公共」とは一体何を意味するのでしょうか。少なくとも日本の社会学の世界においては、2012年には社会学者の盛山和夫・上野千鶴子らによって『公共社会学』という著書が出版されています。それ以前にも、「公共社会学」を謳う論文はいくつか散見されます。

しかしながら世界を見渡せば、社会(科)学におけるこの「公共」という問題は第二次大戦後から今日まで依然として盛んに論じられている、ホットな話題なのです。

今回は社会(科)学の視点から、この「公共」という「問題」を紐解いていきましょう!

講義を終えて

 第一回目の講義では、「「公共」とは何だろうか」という題目のもと、講義を行いました。具体的には、①ハンナ・アーレントの公的領域/私的領域をめぐる議論や、「現れの空間」と「共通世界」に関する政治哲学的議論、②ユルゲン・ハーバーマスによる公共圏をめぐる議論や、「システムによる生活世界の植民地化」に関する社会哲学的議論を主なトピックとして取り扱いました。

 

 受講生の方々、ないし検討会での皆さんからたくさんのご指摘やご意見を頂きました。その中でも、私自身が一番痛感したこととしては「講義の内容が抽象的で、にも関わらず具体例がきちんと示されていない」ということです。こうしたご指摘、ご意見は、受講生とミカタのメンバーの方々関係なしに頂きました。

 

 自分の中では、抽象的ではあれ、理解したかたちで講義に臨んだものの、初学者の方々の観点から考えれば、分かりづらい印象があったことは確かですし、私自身も、講義を終え、皆さんの質疑等を通じてやっと気づいた次第です。そこはやはり私の力不足であったことは否めません。しかしながら、こうした「失敗」を成功のためのバネにして、次回の講義や、これからの教育のために弾みをつけられれば、とも思いました。

アシスタントコメント

 今回の講義は知識を与えることに重きを置いたものであった。あまり深くは理解できなかったものの、質問への答えから、化学と社会学の学問としての性質の違いが分かった。すなわち、私の理解が正しければ、化学では理論と実証は不可分であるものの、社会学ではそれらを分けているということである。

 また、講義中には聞けなかったものの、化学・物理でいう法則(熱力学法則、万有引力、運動方程式など)に値するものが社会学でいうなんなのかという点についても気になったので、機会があればまたお話を聞かせてもらいたいと感じた。

 

浪花晋平(化学)