フィールドの風景・探究の現場

担当:福田・山守

概要

大学の研究者といえば、研究室や実験室で一日中過ごしている、といったイメージはないでしょうか。しかし、現在の京都大学総長・山極寿一氏がアフリカでゴリラを追いかけたように、大学の敷地を遠く離れてフィールドに向かう研究者もたくさんいます。この総人のミカタにも、そんなフィールドで活躍する院生がいます。

 

今回のディスカッションでは、文化人類学の福田さんと海洋生物自然史学の山守さんのお二人にご登壇いただき、フィールドワークの実際と、その方法についてお話をうかがいます。フィールドの選定、道具、宿泊先や食べ物など、現地で体験する諸相から、調査と文献・テクストとの関係まで、興味深い論点ばかりです。

 

主に国内で撮影された多くの写真をもとに、お二人が目にする風景をのぞいてみましょう。

当日は多数のご参加をお待ちしております。

 

文責・司会 村上(歴史学・日本中世史)

講義を終えて

福田

海洋生物自然史学という他分野のフィールドワークについていろいろな話を聞くことができ、非常に良い機会だった。自分はフィールド経験が少ないので自身の体験をあまり多く話せなかったが、山守さんの話は共通点などもあり非常に興味深く聞けた。フィールドワークの実際の苦労や風景の写真の紹介をしたが、自分の話を振り返ると、あまり楽しさややりがい、成果などについては伝えることができていないように思え、興味を持ってもらえたかどうかというと怪しい。お話したように、フィールドワークは確かに苦しい部分もあるが、もちろん楽しいこともある。前提として、楽しそうと思うことについて研究を始めることが大事だと思う。楽しい瞬間を追い求めることは、何事においても大切にしてほしい。

 

山守

福田さんとのディスカッションを通して、文系フィールドワーカーの方の興味深いお話を聞けました。「天候」に左右される自然系フィールドワークに対する、「人」に左右される文系フィールドワーク。人との交渉や駆け引きは本当に難しそうだと思いましたが、その大変な実地調査のお話を熱を込めて語る福田さんは楽しそうで、フィールドワークに対する熱意を感じました。文理それぞれの、一見縁遠いフィールドワークにも、たくさんの共通点がある。現地に行って、その人たちの暮らしに溶け込む。海に行って、海洋生物と同じ潮の満ち引きのリズムで行動する。ちょっと無理やりでしょうか?「あの土地が好き。」「あの人たちの生活が気になる。」「海が綺麗」「あの生き物の形の意味は?」気になるから、好きだから、その土地に飛び込む。机上に本とペンを投げだして(フィールドノートはしっかり持って)現地に飛びこんだ探求者の考え方は、意外と似ているのかもしれないと思いました。

 

村上

この「総人のミカタ」を含め、学部段階では座学で過ごす時間が比較的多いように思います。そこで学部生の皆様には、フィールドワークを含む様々な「探究の現場」があることを知って頂ければ、きっと学問そのもののイメージもより豊かなものになるだろう、そう考えて本日の主旨としました。登壇者のお二人がどのような現場で思考し行動しているのか、具体的に分かる回になったと思います。とりわけフィールドワークを遂行するまでの準備や苦労のお話には、学問的な新知見を獲得するまでの「一筋縄では行かなさ」が示されており、当事者としての矜持すら感じられました。まずは一歩、現場に飛び出してみるとそこには講義室では得がたい豊かな体験がある。そのような体験に下支えされたお二人の学風がうかがわれたように思います。登壇されたお二人と板書を担当された三升さんに感謝致します。