第2回 人間発達の謎へせまり方~ 実験課題を考えてみる~

担当:萩原広道

概要

 みなさんも、わたしも、生まれたときは赤ちゃんでした。言葉をもたず、直立二足歩行もできず、他者はおろか、自分自身ともうまくコミュニケーションをとることができないまま、この世界に仲間入りしたのです。

 それなのに、赤ちゃんは生後約 1 年で歩くことができるようになり、そのおよそ半年後には有意味語を発するようになります。わたしたちはみな、当然のようにこの来し方をもって、さらに成長・発達を遂げ、いまを生きています。

 

 でも、自分が通ってきた道であるにもかかわらず、わたしたちは「なぜ歩けるようになったのか」「どうやって言葉を習得したのか」といった問いに明快な解を与えることはできません。

 発達科学は、このような人間発達の謎に迫り、そのメカニズムを明らかにしようとする学問です。 

 

 この講義では、人間の発達の軌跡(奇跡)を動画で簡単に紹介した上で、発達科学に関するいくつかのトピックについて取り扱おうと思います。「運動」「認知」「言語」「社会性」などから受講者のみなさんの興味に応じて実際に行われた研究を示し、発達の魅力・面白さに迫ります。

 研究の「結果」というよりも「問いを解決するためにどのような工夫を施したのか」についてみなさんと一緒に考え、議論しながら、研究のプロセスを味わいたいと考えています。 

講義を終えて

 今回の講義では、発達科学の中でも「子どもの言語発達」の研究を紹介しました。

 真鍋さんの社会学の講義では人間を「集団」としてとらえて、社会的な枠組みからいろいろな事象を見つめるという「ミカタ」でしたね。それに対して、発達科学では「個々」の人間の成長・発達の軌跡をつぶさに見ていくことが多いです。

 その意味で、それぞれの学問分野の違いがくっきりと対比できる内容になったのではないかと思います。

 

 さて、院生の反省会で挙がったトピックについて、3つほど補足しておきます。

 

①「機能」という用語について

 この用語は少しわかりにくかったかもしれませんね。「名詞」の発達でいうところの機能は、例えば「櫛」なら「とかす」とか、「フォーク」なら「刺して食べる」というように、それぞれの道具に固有の使用方法のことを指します。

 前回の講義では、「モノの名前」と「コトバ」とを結び付けるときに、「形」が大事なのか、この「機能=使用方法」が大事なのか、ということを確認する実験課題について考えました。

 とても面白いアイディアをみなさんが挙げてくださったので、時間が足りないくらい白熱しましたね。

 もしかすると、次回の萩原担当回で「答え合わせ」するかもしれません……。でも、できたら自分で調べてみてほしいなぁとも思います。

 

②ネタの消化

 眠気覚ましにと思って出した写真ですが、「あれは何だったの?」と聞かれたので、ここで消化しておきます。仮装で有名な京大卒業式ですが、萩原はなんと「青色LED」に扮しました。

 ただ、わかりにくかったのかマスコミには一切声をかけられず、一部の理系学生だけがざわざわ…と反応してくれました(笑)ちなみに、卒業式で「蛍の光」斉唱の間、会場でひとりピカピカと発光していたことを申し添えておきます。

 

③文献検索の方法について

 京大では、いろいろな学術雑誌をフリーで読むことができます。論文を探すときの検索方法について、もっと詳しく説明したかったのですが、時間の都合でさらっと流してしまいました。

 このやり方は、次回の萩原担当回の冒頭で丁寧に紹介したいと思いますので、知りたい方は早めにお越しください!