菌類を生態学する

概要

 第一回の講義では、菌類という生物の基礎について学びました。第二回の講義では、それを踏まえ、菌類の生態学研究についてお話ししたいと思います。
 生態学は自然界での生物の生き方や、環境との関連を扱う学問です。例えば、きのこの色や毒にどんな意義があるのかを調べるのは生態学の仕事です。また、生物の群集や分布を調べるのも生態学です。これらのテーマは一見すぐに答えが出そうにも思えますが、実はまだ研究途中のテーマです。これらのテーマへの答えがなかなか出ない理由の一つに、菌類のユニークな生き方が挙げられます。菌類には個体という概念がなかったり、普段基質の中で生活しており肉眼で姿を確認できなかったりするため、動物や植物で発展してきた手法を直接当てはめられない場面が多々あります。
 今回の講義では、まず生態学とはどのような分野なのかを簡単に紹介し、菌類を対象とした生態学研究の例に触れることで、菌類という生物のユニークさを実感したいと思います。

講義を終えて

今回は、「菌類を生態学する」というテーマのもと、菌類を例に生態学の考え方を体感してもらうことを目標に講義を行いました。講義では、1)きのこの色や毒の意義について仮説を立ててもらい、その仮説を検証するためにはどのような調査を行えば良いのか、2)ある場所にどんな菌類がいるかを調べるためにはどのような手法を用いたら良いか、について学生の皆さんに意見を出してもらいました。それらしい仮説が立てられても、その仮説の妥当性を検証して示せなければ研究にはなりません。特に、直接目で観察することのできない菌類では、動植物で使われている手法が使えないことも多く、今回皆さんに考えていただいた2つのテーマについても、研究をしようと思ったら、意外と一筋縄では行かないということを感じていただけたかなと思います。
今回は、学生に意見を出してもらう時間を多く設けていたため、積極的な学生がいないと成り立たない講義でした。前期から「総人のミカタ」に出席し、学生のレベルや積極性についての事前知識があったからこそ作れた講義かなと思います。学生の皆さんと一緒に考えながら講義ができる機会はなかなかないと思いますが、思わぬ意見が出るなど、講義をしている側も楽しい講義でした。