海洋生物の自然史ー生物の多様性と様々な共生系2ー

担当:山守(海洋生物自然史学)

概要

異なる種類の生物が相手を利用し、または互いに助け合って生きて行く系、共生系。共生系は海洋環境を複雑化し、生物相を豊かにしてきました。

 

この講義では様々な海洋生物の間の共生系が生物多様性に、そして生態系にどのような影響を与えてきたかを見ます。そして、人の活動が生態系に与えていく影響を、共生系の視点から考えてきます。

講義を終えて

前回は「生物の多様性を形作る共生系」についてお話させていただきましたが、今回は、「共生系を支える多様な環境」を取り上げました。全海洋面積のほんの0.2%しかないのに、40%もの海洋生物を擁するサンゴ礁。そこには、大きな生物の体表や巣穴に小さな生物が住み込み、その住み込み共生者にさらに別の共生者が居着く、という「住み込み連鎖」によって形作られた膨大な多様性が見られます。その住み込み連鎖はサンゴ礁だけでなく、磯や干潟といった多様な環境で巣穴形成者を起点として展開され、それぞれの環境で固有の生態系を生み出してきました。

 

ですが、人の短い歴史の中で、日本の尊い海岸線は次々と開発の手がかかり、多様な生物を育む豊かな海岸環境は単調なコクリートの塊へと姿を変えていきました。そして、今もなお、各地で海岸は改変され、沿岸生物たちは絶滅やその危機に追い込まれています。

このまま開発を続けて、本当に良いのか。本当に守るべきものは、何か。将来生物に関わる人もそうでない人も、自然環境について深く考えていただけたらと思います。

アシスタントコメント

今回の大きなテーマであった生物多様性という概念は、聞いたことこそあるが具体的にどのようなものなのか、またなぜ重要なのかについて改めて考える機会は多くないため、意義深かったと思われます。全体的に良質な講義であり、学生の反応もよく成功していました。生物という題材は誰にでも興味を持ってもらいやすいものですが、それに頼ることなく、その見せ方や会場とのやり取りも工夫されていたと思います。検討会でも意見が出ていましたが、政治的な話題に触れる場面でもこの程度ならまず問題にならず、むしろ講師自身の見解を聞くことは受講者にとって興味深いはずです。基本的に講義は今のやり方でうまく行くはずなので、あまり迷わずにその持ち味を活かせれば良いと思います。

須田(解析学)