概要

 数年前にメディア上で「人文系不要論」が取りざたされました。それ以降も数々の入試改革や大学編成にかんする議論を通して、現代社会における教養や知のあり方はたえず議論されています。しかし、長い視野で見れば、こうした議論は今にはじまったことではありません。
 そもそも教養の理念や近代大学が成立したのは1800年頃のドイツです。当時人々は、フランス革命と産業革命という急激な社会変動にさらされ、一寸先も見通せない混乱のさなかにいました。そのなかで知識人たちが、新しい社会のビジョンとして提示したのが、教養理念と近代大学だったのです。
 本講義の目標は、彼らの思考の軌跡を現代においてたどり直すことで、新しい知のあり方を議論するためのきっかけをつくることにあります。第一回講義は彼らの重要文献を検討する「理念篇」、第二回講義は最初の近代大学であるフンボルト大学の成立をたどる「歴史篇」とする予定です。