概要

この講義では、20世紀の西洋音楽史において大きな影響力を持ったアメリカの作曲家、ジョン・ケージ(1912-1992)について取り上げます。
ケージは、1950年前後から、「ニューヨーク・スクール」と呼ばれることになる作曲家たちとの交流を通して、作曲行為における「偶然性」や「不確定性」に着目し、新たな手法を探求し始めます。これらの手法は、「作曲家による作品の制作」という伝統的な側面を担保しながらも、結果として生じる音響に「自由」を与えることを目指すものでした。この講義では、これらの手法が発展させられた経緯やその意義について検討しながらケージの作曲行為についての理解を深めるとともに、「(音楽)作品」や「作者(作曲家)」といった自明視されがちな概念について再考します。